最近、日本でも浸透してきたセイバーメトリクスの指標「WAR」。
この記事では、WARとは何か?計算方法や読み方を解説し、最後に大谷翔平選手のWARについて紹介していきます。
【野球】WARとは?
WARとは「Wins Above Replacement」の略で、選手の走・攻・守・投の総合力を評価する指標です。
直訳すると、代替可能選手が出場した時と比較してどれだけ勝利を上乗せできるかという意味になります。
WARの読み方は?
アメリカの掲示板サイトRedditで、本場のアメリカ人もWARの読み方について議論をしています。
そこでは「Wore(ウォア)」や「(Whore)ホァ」などいろんな意見が出ていたものの、結局は戦争のWarと同じ「ウォー」と読めば間違いなさそうです。
代替可能選手とは?
WARを直訳すると「代替可能選手が出場した時と比べて、どれだけ勝利を上乗せできたか」を意味します。
ここでいう代替可能選手とは、最低年俸ですぐにでも契約できる3AやFA選手のことを指し、レベル感で言うと、代替可能選手だけでチームを作ると勝率.294を期待できるという最弱レベルです。
ゲームをする人向けに簡単に例えると、「やきゅつく」で新しく始めた時にチームに最初から在籍しているモブキャラのような意味合いです。
パワプロのサクセスで最初からいる、能力値がFやGだらけのモブキャラとも言えます。
つまり、WARとはそのリーグの最低限の能力を持った選手よりどれだけ優れているか?を表す指標とも言い換えることができます。
WARはサイトによって算出方法が異なるので注意
WARは共通ではなく、計算する会社によって算出方法が異なり、明確に別のものとして扱われます。
例えば、MLBにおけるWARは、FangraphsとBaseball-Referenceが有名です。
Fangraphsが計算するWARを「fWAR」、Baseball-Referenceが計算するWARを「bWAR」もしくは「rWAR」と区別しています。
日本ではDELTA・データスタジアムが有名です。
【野球】WARの計算方法は?
WARは「打・守・走・投」全ての能力を数値化して足して、ポジションごとに補正をかけることで算出します。
WAR=攻撃指標+守備指標+走塁指標+投手指標
「打・守・走・投」で利用する指標は?
攻撃・守備・走塁・投手の各種能力を数値化するため、下記の指標を用います。
算出対象 | 用いる指標 | 何が分かる? |
---|---|---|
攻撃指標 | wRAA | 平均的な選手よりどれだけ得点できたか? |
守備指標 | UZR / DRS | 平均的な選手よりどれだけ失点を防げたか? |
走塁指標 | BsR | 平均的な選手よりどれだけ走塁、盗塁、併殺阻止で得点に貢献したか? |
投手指標 | FIP / 失点率+DRS | 野手の守備による影響を完全に排除した、純粋な投手能力 |
さらに上記の計算結果に対してこのような補正をかけます。
対象 | 補正内容 | 補正の意図 |
---|---|---|
攻撃指標 | パークファクター | 打者有利、打者不利の球場格差を無くすため。 |
守備指標 | なし | なし |
走塁指標 | ポジションごとの補正(次項) | ポジションごとの守備負担の重さの違いによる不平等を無くす。 |
投手指標 | パークファクター その他複数の補正あり | 投手有利、投手不利の球場格差を無くすため。 |
投手には複数の補正を与えて野手とのバランスを取ることで、投手と野手間でWARという単一指標で選手の能力を比較できるようにしています。
WARの計算は非常に複雑なので、「選手の総合力を投手・野手共通で比較できる」という概念だけ覚えておいて、計算は専門の会社に任せて、数値だけ確認するのが一番良いです。
ポジションごとの補正とは?
守備指標にかける「ポジションごとの補正」とは具体的に下記の通りで、算出する会社ごとに異なる基準を用いています。
ポジション | Baseball Reference | Fangraphs | DELTA |
---|---|---|---|
捕手 | 9.7 | 12.5 | 20.5 |
一塁手 | -10.3 | -12.5 | -16 |
二塁手 | 3.2 | 2.5 | 3.9 |
三塁手 | 2.2 | 2.5 | -5.4 |
遊撃手 | 7.6 | 7.5 | 11.7 |
左翼手 | -7.6 | -7.5 | -13.6 |
中堅手 | 2.7 | 2.5 | 4.8 |
右翼手 | -7.6 | -7.5 | -5.7 |
指名打者 | -16.2 | -17.5 | -17.1 |
守備負担が重いポジションである捕手や遊撃手などには高い補正を与え、逆に守備負担が軽いDHや一塁手などにはマイナス補正を与えているところは共通しています。
これでポジション間の不平等を無くします。
WARの目安
WARは数値が高ければ高いほど優れた選手であることを意味します。
WARには一定の評価基準が存在し、fWARの場合、1シーズンの数値によって下記のように評価されます。
評価 | fWAR |
---|---|
MVP受賞級選手 | 6以上 |
スーパースター | 5-6 |
オールスター級選手 | 4-5 |
レギュラーの中でも有能な選手 | 3-4 |
レギュラー | 2-3 |
ベンチ | 1-2 |
二流選手 | 0-1 |
大谷翔平のWARはいくつ?
大谷翔平の年度別のWARを紹介します。
年度(満年齢) | fWAR(バッター) | fWAR(投手) | fWAR(合計) | MLB順位 |
---|---|---|---|---|
2018(24歳) | 2.7 | 1.1 | 3.8 | 62位 |
2019(25歳) | 1.7 | 登板なし | 1.7 | 248位 |
2020(26歳) | 0.0 | -0.1 | -0.1 | 1024位 |
2021(27歳) | 5.0 | 3.0 | 8.0 | 1位 |
2022(28歳) | 3.8 | 5.6 | 9.5 | 2位 |
2023(29歳) | 6.6 | 2.4 | 9.0 | 1位 |
WARはMVPを決める時に重要視される指標で、WARが1位だった2021年はMVPを受賞したものの、2022年はWARが2位で惜しくもMVPを逃しました。
ちなみにミゲル・カブレラ選手が三冠王を獲得した2012年のWAR1位は10.0のマイク・トラウト選手。
この時は、三冠王のネームバリューがWARに勝って、ミゲル・カブレラ選手がMVPを獲得しました。
2023年は三冠王やホームラン記録更新など特別なことが起きず、かつ大谷選手がこのままの活躍を続けてくれれば、WARが1位の大谷選手のMVPはほぼ間違いありません。
【野球】WARとは?計算方法や読み方は?大谷翔平のWARはいくつ?【まとめ】
この記事では、WARとは何か?計算方法や読み方を解説し、最後に大谷翔平選手のWARについて紹介しました。
WARとは選手の走・攻・守・投の総合力を評価する指標で、「ウォー」と読みます。
WARの計算方法は非常に複雑なため、概念の理解だけして、専門の会社が計算したものをデータとして見ることをオススメします。