2005年に始まった育成選手制度。
育成選手の制度は割と複雑にもかかわらず、ニュースでも細かくは説明されません。
そこでこの記事では、育成選手と支配下登録選手の違いや、そのメリットや問題点について紹介していきます。
【プロ野球育成選手とは】年俸や支度金などの規則は?
育成選手と支配下登録選手の違いは?
育成選手と支配下登録選手の違いをまとめました。
項目 | 支配下登録選手 | 育成選手 |
---|---|---|
最低年俸 | 440万円~ | 240万円~ |
年俸上限 | なし | なし |
契約金 | 最高1億円 | なし ※通常、支度金が300万円程度支給される |
契約期間 | 毎年2月1日~11月30日 | 毎年1月1日~12月31日 |
背番号 | 00~99が使用可能 | 3桁の番号 |
出場可能試合 | 一軍、二軍 | 二軍のみ |
支配下登録人数の制限 | 70人まで | 支配下登録とは別枠で人数制限なし 育成選手の保有には、支配下登録選手が65人以上必要 |
育成選手は、支配下登録選手が65人以上いないと保有できないルールになっています。
このように支配下登録選手ありきの育成選手なので、待遇にも大きな差がつけられています。
育成選手制度のメリットは?
育成選手制度のメリットは、キラリと光る原石の成長機会を逸さないことにあります。
球団側とすれば、支配下登録の枠を開けずに育成選手として獲得し、そこから大きく成長する選手が出てくればラッキー。
選手側としても、育成の制度がなければドラフトにかからなかった選手にもプロ野球選手になるチャンスが出てきます。
このように育成選手制度は、球団側にとっても選手側にとってもWin-Winで健全な制度なのですが、問題点もあります。
育成選手の問題点は?
育成選手の問題点として挙げられるのが、本来の「有望な若手の育成のため」という目的から逸した使い方をされていることです。
FAの人的補償リスト外し
現行の制度だと、育成選手はFAの人的補償リストの対象外になります。
このルールを利用し、任意の選手を育成契約に変更することで、FAの人的補償リストから外すことができます。
そして、FAの人的補償の指名が終わったら支配下登録に戻せば元通りです。
人的補償のリストは通常28人ですが、この裏技を使うことで追加でプロテクトが可能になります。
怪我をしている選手や移籍されたくないベテラン選手などは、この裏技のターゲットになりやすい傾向にあります。
過去には巨人の上原投手が手術後という理由で、自由契約後に育成契約を締結。
巨人がFAの人的補償リスト提出後、すぐに支配下登録に戻ったという事案もありました。
怪我の治療目的や高額年俸の育成選手問題
育成選手の獲得方法はドラフトのみではありません。
既存の支配下登録選手を自由契約後に、新たに育成契約を締結することもできます。
例えば、一軍で活躍していた選手が手術を受けた場合、リハビリ期間だけ育成選手になるというような使い方も可能なわけです。
リハビリ期間はどうせ一軍の試合には出れませんしね。
こうなると、元々一軍で活躍していた選手なので年俸が高く、年俸が億単位の育成選手が誕生することもあります。
完全に支配下登録人数の枠を開けるために育成選手制度を利用しているので、「これはどうなの?」と問題視されています。
とはいえ、これらの問題点に関しては、各球団は制度の穴を突いているだけであることは間違いありません。
NPBとして育成選手制度自体の見直しが検討されているところです。
育成選手からスター選手になった事例
育成選手から一軍のスター選手になるためには、チーム内の競争に勝ち続けなければなりません。
- 二軍の試合出場枠を勝ち取る。(育成は5人までしか出られないため)
- 二軍で活躍する。
- 育成から支配下登録を勝ち取る。
- 一軍の試合出場枠を勝ち取る。
- 一軍のレギュラーになる。
支配下選手でドラフト上位だと、入団当初から一軍での活躍を見込まれている選手も多く、④からのスタートの場合もあります。
育成選手だと強制的に①からのスタートになるため、かなり大変です。
そんな中、スター選手にのし上がった育成出身選手を紹介していきます。
千賀滉大(ソフトバンク→ニューヨーク・メッツ)
育成選手出身初のメジャーリーガーになった千賀滉大投手。
MAX164キロのストレートとお化けフォークを武器に、7年連続2桁勝利など文句なしの実績を誇るソフトバンクホークスのエースでした。
また、育成選手として初の投手三冠王など記録を多数所持しています。
2023年の年俸は約17億円($14,000,000)で、育成選手として270万円だった年俸は約630倍になりました。
山口鉄也(巨人)
元祖・育成のスター選手と言えば、巨人の山口鉄也投手です。
最優秀中継ぎ投手を3度受賞するなど、2000年代後半から2010年代前半にかけての巨人の左の中継ぎエースでした。
入団時は240万円だった年俸は、最高で3.2億円まで到達しました。
甲斐拓也(ソフトバンク)
「甲斐キャノン」でおなじみ、強肩キャッチャーのソフトバンク・甲斐拓也選手。
千賀投手と同期で、城島健司さん退団後に埋まらなかったホークスの正捕手の穴を見事に埋めました。
入団時は300万円だった年俸は、最高で2.1億円まで到達しました。
日本代表のキャッチャーとしても知られています。
他にも育成選手は一芸に秀でた選手の宝庫
育成選手には異様に足が速い、守備がうまいなど一芸に秀でた選手が多いのが特徴。
これまでに育成選手から一軍に定着した主な選手がこちら。
- 松本哲也(巨人)
- 岡田幸文(ロッテ)
- 牧原大成(ソフトバンク)
- 周東佑京(ソフトバンク)
- 石川柊太(ソフトバンク)
- 西野勇士(ロッテ)
- 大関友久(ロッテ)
牧原選手や周東選手は2023年WBCメンバーにも選ばれましたね。
こういった原石を磨き上げて、一軍の戦力になっていく様を見るのもプロ野球の醍醐味ですよね!
【プロ野球】育成選手とは?支配下登録との違いは?メリットや問題点を解説!【まとめ】
この記事では、育成選手と支配下登録選手の違いや、そのメリットや問題点について紹介してきました。
育成選手の制度は、原石の選手を磨き上げて一軍の戦力に育て上げることができるものです。
成功例は特にソフトバンクに多く、数多くの育成出身の選手をWBCに送り込みました。
基本的には良い制度ですが、制度に一部抜け穴があるため、NPBには制度の見直し・改善が求められています。