昨今、ピッチクロックの導入や二塁ベースの拡大、内野シフト禁止など大胆な改革が行われているメジャーリーグ(MLB)。
2023年12月、MLBが2024年のルール改正を発表。上記に挙げたものほどのインパクトはないものの、新たにルール変更が加わることになりました。
そこでこの記事では、2024年のメジャーリーグにおけるルール変更について紹介していきます。
変更①ピッチクロックの短縮
メジャーリーグでは2023年からピッチクロックが導入されました。
ピッチクロックとは、ピッチャーがキャッチャーから返球を受けてから投球モーションに入るまでの秒数制限のことで、下記のようなルール設定がされていました。
- ランナーがいない場合は15秒以内
- ランナーがいる場合は20秒以内
それが、2024年からは下記のようにランナーがいる状況のみ2秒短縮となります。
- ランナーがいない場合は15秒以内
- ランナーがいる場合は
20秒→18秒以内
これは2023年の実績ベースで、ランナーがいる場合のピッチクロック違反が少なかったことから考案されており、もっと試合時間を削れるという思惑があります。
ちなみに3Aではランナーがいる場合のピッチクロックは17秒にもかかわらず、違反が増えていないことから、今後さらに秒数が減少する可能性もあるとされています。
さらに2023年はピッチャーがマウンドに入った時点からピッチクロックがカウントされていたのが、2024年からはピッチャーが新しいボールを受け取った時点からカウントされるように変更。
これはピッチャーがマウンド周辺をウロウロすることで、ピッチクロックのカウントを意図的に遅らせていた「抜け道」を塞ぐためのルール変更で、2024年からはピッチクロックの運用が更に厳しくなる見込みです。
変更②投手交代の時間短縮
投手交代の時、これまでは2分15秒だった持ち時間が2分へ短縮されます。
2023年の投手交代時にかかった平均時間が2分35秒だったのに対し、テレビ放送でCMを流せる持ち時間が2分。
テレビ放送における試合とCMのスムーズな切り替えや、試合時間の短縮を狙ったルール変更と考えられます。
変更③イニング前にウォームアップした投手は最低1人以上の打者と対戦
新しいイニングに入ってからピッチャーがウォームアップを終えたにも関わらず、1球も投げずに投手交代となったケースが2023年だけで24回発生。
これだけで約3分の無駄があるとMLBは考えており、2024年からはイニング前にウォームアップした投手は必ず1人以上のバッターと対戦する義務が発生します。
これにより、例えば極端に苦手にしているバッターがイニングの先頭に代打で出てきた時などに、ピッチャー交代することができなくなりました。
ピッチャーの続投判断はこれまで以上に重要になりそうです。
ワンポイント禁止ルール(打者3人以上と対戦しなければならない)は継続。あくまで本ルールとは別物です。
変更④監督やコーチがマウンドに行く回数減少
従来は、監督やコーチがマウンドに行く回数は5回までだったものが、2024年からは4回までに変更されます。
2023年の実績では、1試合で監督やコーチがマウンドに行った平均回数は2.3回。
また、98%の試合において4回以上監督やコーチがマウンドに行かなかったというデータの裏付けがあり、今回のルール変更となりました。
これは特段大きな変更ではなさそう。
変更⑤打者走者の本塁~一塁間における走路拡大
これまでのルールでは、打者走者が一塁へ走る際にフェアゾーン側を走って守備を妨害したと判断された場合はアウトとなっていました。
2024年からは、一塁線のラインから18~24インチ(約46~61cm)分ほど、打者走者の走路が拡大。
これは、打者走者が守備妨害に取られない範囲が広がる=打者有利のルール変更です。
これにより特に捕手が処理するセーフティバントは、打者走者の走路が拡大した分だけ送球と打者走者が被って送球しにくくなり、成功しやすくなる可能性があります。
前年のルール改正で行われた二塁ベース拡大や牽制回数制限と合わせて、俊足のバッターがセーフティバントで出塁して盗塁を決めるシーンが増えるかもしれません。
変更⑥ブロッキングベース
ブロッキングベースは日本のプロ野球からの逆輸入での導入となりました。
事の発端は、2023年8月18日の阪神vsDeNA戦で起きた走塁妨害。
阪神・熊谷選手が盗塁を試みた際、遊撃手のDeNA・京田選手が二塁ベースを塞ぐ形でカバーに入って盗塁を阻止したことで、阪神・岡田監督が猛抗議。
早速、9月5日からベースを塞ぐのは走塁妨害とするルールに改正されました。
たった2週間でのルール改正は異例です。
これがMLBでも2024年から採用。
コリジョンルールなど、怪我を防ぐためのルール改正は以前から行われており、今回も怪我を誘発しかねないブロッキングベースに対して規制が入る形となりました。
【まとめ】結局、試合時間短縮から野球人気上昇に繋げたいという思惑がある
本記事では、2024年のMLBにおける6つのルール変更について紹介しました。
- ピッチクロックの短縮
- 投手交代の時間短縮
- イニング前にウォームアップした投手は最低1人以上の打者と対戦
- 監督やコーチがマウンドに行く回数減少
- 打者走者の本塁~一塁間における走路拡大
- ブロッキングベース
これらのルール変更のほとんどは試合時間短縮のため。
観客や視聴者に間延びしない野球を見せることで、野球人気上昇に繋げたいというMLB機構の思惑があります。
一方で、ピッチクロックの導入による疲労回復時間の短縮から投手の怪我につながるのでは?という懸念も報道されており、今後もルール改正を重ねて良い塩梅を見つけていくことが予想されます。