2023年からMLBで導入されたピッチクロック。
導入前から賛否両論あったものの結局導入されており、今後は日本でも導入が検討されているという報道もありました。
この記事では、そんなピッチクロックとはそもそも何なのか、ルールや導入による効果について紹介していきます。
ピッチクロックとは?導入の背景は?
ピッチクロックとは、ピッチャーが投球するまでの時間とバッターが打席で構えるまでの時間を一定時間に制限するルールのことです。
ピッチクロック導入の背景は?
ピッチクロックは賛否あるルールではありますが、2023年からMLBで導入されました。
導入目的は試合時間の短縮です。
この背景には、他スポーツと比べてプレイしていない時間が長すぎるという問題があります。
野球ファンに言わせると、その「間」が良いんですけどね…
ピッチクロック導入により無駄時間を省いて試合時間を短くすることで、野球の冗長な間を嫌っていた他スポーツのファンを取り込みたいという思惑があります。
実際、MLBにとっては他スポーツとのファンの奪い合いは死活問題。
テレビ局がMLBに支払う放映権料は、テレビ局が流す広告をリーチできるMLBファンの数に比例します。
選手の年俸はテレビ局からの莫大な放映権料で賄われている面も大きく、またMLBの今後の発展のためにもファンの数は多いに越したことはありません。
心情的にはピッチクロックは反対ですが、プロ野球の将来を考えると必要な変化なのかなとも思います。
ピッチクロック導入には賛否両論あった
ピッチクロック導入にあたってはアメリカでも賛否両論がありました。
ピッチクロック反対派の意見
MLB最高峰のピッチャーであるマックス・シャーザー投手は「ピッチクロックは逆に試合の流れを乱す」「ピッチャーがただの投げる人になる」などと大反対しています。
ロジャー・クレメンス氏も反対論者です。
他にも「ピッチャーとバッターの駆け引きが無くなって面白くない」「考える間なく機械的に進んでつまらない」などの反対意見があります。
ピッチクロック賛成派の意見
逆にピッチクロック導入賛成派として「レギュラーシーズンの試合を4時間も見たくない」という意見があります。
MLBではレギュラーシーズン162試合を戦った後にようやく本番のプレイオフがあるため、そこまでは効率的に試合を進めてほしいという意見も頷けます。
ピッチクロックのルールを徹底解説!【牽制は?】
ピッチクロックの詳しいルールは下記の通りです。
【ピッチクロック】投手の制限は?
ピッチャーは、キャッチャーから返球を受けてから投球モーションに入るまでの秒数が制限されます。
- ランナーがいない場合は15秒以内
- ランナーがいる場合は20秒以内
上記のルールを犯した場合は、1ボールが宣告されます。
【ピッチクロック】牽制はどうなる?
ピッチャーがプレートを外して牽制球を投げる回数にも制限が入りました。
- プレートを外す動作や牽制球は同じ打者に対して2回まで
- 3回目以降はランナーなしだとボール、ランナー有りだとボーク(牽制アウトの場合は例外)
このルールにより、2回牽制を行った投手は実質的にこれ以上牽制ができないことを意味するため、圧倒的に走者が有利になりました。
【ピッチクロック】捕手の制限は?
投手が投球動作に入る時間に制限がかかるということは、同時にキャッチャーが構えるまでの時間にも制限が入ることを意味します。
- 投手の残り持ち時間9秒までにキャッチャーボックスに入り、構える
上記のルールを犯した場合は、投手のピッチクロック違反と同様に1ボールが宣告されます。
【ピッチクロック】打者の制限は?
一方で、バッターは一定時間以内に構えないとピッチクロック違反になります。
- 初球の持ち時間は30秒
- 投手の残り持ち時間8秒までにバッターボックスに入って構える
他にはバッターの登場曲は10秒以内などの細かいルールもあります。
バッターがピッチクロック違反を犯した場合は、1ストライクが宣告されます。
ピッチクロック導入による効果は?
MLBはピッチクロック導入によって、試合時間短縮だけでなく打高投低に持って行きたいという思惑も見えます。
MLBは過去にストライキで離れた野球人気を、マグワイアとソーサのホームラン王争いによって取り戻した経験あり。
FOXスポーツの記事でも紹介されている通り、ピッチクロックは試合時間短縮によって投手の休憩時間を少なくし、牽制回数の制限はランナーの盗塁機会を増やします。
ここではピッチクロック導入によって、どんな効果があったかを紹介します。
ピッチクロック導入の効果①試合時間短縮
ピッチクロック導入の主目的だった試合時間短縮ですが、これに関しては大きな成果をあげました。
直近10年のMLBにおける試合時間の一覧表がこちら。
年度 | 試合時間(延長含む) | 9回換算試合時間 |
---|---|---|
2023 | 2時間40分 | 2時間38分 |
2022 | 3時間6分 | 3時間3分 |
2021 | 3時間11分 | 3時間10分 |
2020※短縮シーズン | 3時間6分 | 3時間7分 |
2019 | 3時間10分 | 3時間5分 |
2018 | 3時間4分 | 3時間0分 |
2017 | 3時間8分 | 3時間5分 |
2016 | 3時間4分 | 3時間0分 |
2015 | 3時間0分 | 2時間56分 |
2014 | 3時間7分 | 3時間2分 |
2023年の試合時間は3時間を大きく割っており、同じ水準を探すと1984年の2時間35分(9回換算試合時間)までさかのぼる必要があります。
約30年ぶりの水準にまでスピードアップできました。
ピッチクロック導入の効果②盗塁数の増加
ピッチクロック導入年となった2023年、盗塁数が激増しています。
直近10年間のMLB全体の盗塁数の一覧表がこちら。
年度 | 消化試合数 | 盗塁数 | 1試合あたりの盗塁数 |
---|---|---|---|
2023 | 2886 | 2074 | 0.72 |
2022 | 4860 | 2486 | 0.51 |
2021 | 4858 | 2213 | 0.46 |
2020※短縮シーズン | 1796 | 885 | 0.49 |
2019 | 4858 | 2280 | 0.47 |
2018 | 4862 | 2474 | 0.51 |
2017 | 4860 | 2527 | 0.52 |
2016 | 4856 | 2537 | 0.52 |
2015 | 4858 | 2505 | 0.52 |
2014 | 4860 | 2764 | 0.57 |
2023年水準の盗塁数は、1試合あたり0.73盗塁だった1997年までさかのぼる必要があります。
26年ぶりの高水準!
結論、ピッチクロック導入によって盗塁数が増加し、走塁によるスリリングさは増したと言えます。
ピッチクロックとは?ルールや導入による効果は?牽制はどうなる?【まとめ】
この記事では、ピッチクロックとは何なのか、ルールや導入による効果について紹介しました。
ピッチクロックとは、ピッチャーが投球するまでの時間とバッターが打席で構えるまでの時間を一定時間に制限するルールのことです。
ピッチクロック導入によって、約30年ぶりの水準にまで試合時間をスピードアップすることに成功しました。
ただ、試合時間短縮はMLBの人気底上げのための手段にしか過ぎません。
試合時間が短縮されたことによりどれだけファンが増えたのか、どれだけMLBに利益をもたらせたのかをしっかり数値で評価できるようになった時が、ピッチクロック導入の真の評価ができる時になりそうです。